バングラデシュ:地域の医療アクセス向上を目指すICTを活用したヘルステック企業の挑戦

東大発医療ベンチャーである株式会社miup(本社:東京)は、ICTを活用した疾患の早期発見システムを開発し、バングラデシュのプライマリ・ケアを担う民間薬局への導入を目指している。同国では、経済成長に伴う生活習慣や食生活の変化により、がん、糖尿病などの非感染性疾患(以下、NCDsという)を患う患者が急増しており、このシステムを導入することで、薬局に来店する患者のNCDsリスクを容易に診断でき、疾患の早期スクリーニングに繋げることが可能となる。住民にとって身近な存在である薬局と、近隣の病院との連携を促進し、シームレスな医療情報連携ネットワークの構築に取り組んでいる。

地域の医療を支える民間薬局、住民の健康相談も担う

インドとミャンマーに国境を接し、南インドに位置するバングラデシュ。世界の中でも最も人口密度が高い国であり、堅調な経済成長率を維持し続ける新興国の1つとして注目されている。

そんなバングラデシュの医療環境は、都市部における富裕層向けの先進的治療が中心となっている一方で、近郊・農村地域においては、医療施設・医師数共に極めて少ないのが現状である。そのため、地域に存在する民間薬局(多くは非認可)は、地域住民にとって信頼が厚く、健康相談ができる場所として重要な役割を担っている。しかし、患者の多くは、慣習的に薬局での健康相談を行うに留まり、重症化してしまうケースが常態化している。

罹患リスクを判断できるスマホアプリを開発、薬局に導入することで重症化を防ぐ狙い

そこでmiup社横川祐太郎氏による事業構想のもと、NCDs早期発見システムを開発。同システムを薬局へ導入することで、非薬剤師でもスマートフォンで来店客のNCDs罹患リスクを容易に判断でき、重症化前の受診を促す仕組みづくりを目指している。具体的には、薬局でのNCDs早期発見から、病院による診断・処方を経て、経過観察に繋げる包括的なサイクルを構築するものだ。本事業は、経済産業省のヘルスケア産業国際展開推進事業に採択され、昨年度はNCDs早期発見システムの開発・実証実験を実施。今年度は、周辺サービスとして、患者情報を薬局と病院で共有できる「患者情報相互管理システム」を新たに導入することで、患者に対してタイミングよく受診を促すなどして患者との接点を強化する。

現在、システム導入に係る基礎調査(弊社担当)やシステム開発を進めており、今後は意見交換会で把握した現地ニーズをシステム改善に活かす予定だ。システムのさらなる普及のため、薬局や病院の業務効率化や利益向上に資するシステム構築に取り組んでいく。(文責:ビジネスコンサルティング事業部 齋藤)

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