インド:日本の経験とノウハウを生かした在宅介護サービスへの期待

人口増加により若年層の多いインド。でも実は、経済と医療の発展により、平均寿命が長くなり、高齢者の人口が増えつつある。高齢者のケアは家族が担っているが、経済的に豊かな家庭、共働き、海外への移住などの理由から、在宅介護へのニーズが高まっている。このようななか、介護人材の育成と確保、そしてサービスの質向上にむけて、日本の経験とノウハウへの期待が高まっている。

信頼できる質の高い在宅介護サービス(医療介護ではないサービス)へのニーズ増大

インドは2050年には高齢社会に突入する。家族のつながりが強いインドでは、高齢者のケアは家族が担うのが当たり前である。よほどの事情がない限り、老人ホームなどの施設に身内を入れるのには、抵抗がある。以前に増して女性が社会進出したり、海外に出稼ぎする人も増え、身内だけで高齢者ケアをすることが難しくなってきている。現に、4割以上の世帯が、高齢者ケアは重荷になっていると感じている。高齢者人口が増えつつ、かつ国民の可処分所得が拡大するなか、高齢者ケア市場への需要は高まっている。特に、上記のような理由から、在宅介護に対するニーズが最も大きくなっている。他人に大切な人の介護を頼むからには、信頼できる人を見つけたいという思いがある。さらに、一定のサービスの質が担保されないと、在宅介護のサービス利用に踏み出せないのが現状である。

このような市場の変化をいち早く感じ取り、ここ5~8年くらいの間に在宅介護のサービスを提供する企業が複数現れた。彼らは特に、経済的にゆとりのある家庭や富裕層をターゲットにしている。しかし、医療介護を専門とするサービスが多く、非医療介護サービスを提供する企業はまだ数少ない。実際、サービスを提供する企業側は質の高い介護人材の育成と定着に苦労している。

介護人材育成とサービスの質向上に向け、日本企業の協力も

インドの介護人材の育成は、国家社会保護研究所が短期・長期養成コースを設けているほか、民間企業が独自の研修を通じて行っている。しかし、日本のように介護従事者のキャリアアップの制度はなく、介護従事者のモチベーションを維持し、定着させる方法に乏しい。高齢者ケアの経験豊富な日本の組織と提携して、介護人材の能力向上を図るためカリキュラムを見直し、人材育成を強化すること、サービスの質の向上を図ることに期待を寄せている市民、企業は少なくない。

(文責:ビジネスコンサルティング事業部・大西)

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