ポーランド:ウクライナ避難民とポーランド人 異文化の相互理解を通じた融和のために

~多感な両国の児童の融和に向けた参考事例のご紹介~

ポーランドは、地理的にも歴史的にもウクライナとの関わりが深く、言語も比較的に近いことから、ウクライナからの避難民を多く受け入れている。避難民の数は、当社および学研(親会社)が支援中のルーマニア(11万人)よりも数倍は多いとみられている。避難児童はルーマニアと異なり、ほとんどがポーランドの小・中学校に通学し、ポーランドの児童と一緒に授業を受けている。言語がウクライナと近いこともあり、短期間で現地の学校に慣れるようだ。

しかし、学校によっては生徒数が急増し、教師が授業に十分に対応しきれていないという実情もある。また、クラスに外国の児童が加わることで、差別やいじめ、暴言等も見受けられるようだ。多感な両国の児童のために、なにか有効な支援はできないか。

NGOが避難家族の支援に活躍

ポーランドにおいては、ルーマニア同様、世界160か国で活動するNGOカリタスが、避難児童およびその家族の支援を活発に行っている。具体的には、ポーランド内に28の支援センターを設置し、75,000人の避難者を支援している。避難児童はルーマニアと異なり、ほとんどがポーランドの小・中学校に通学し、ポーランドの児童と一緒に授業を受けていることもあり、支援はもっぱら母親向けが主なようである。特に、心身面のケア(医師、看護師、セラピストによるケア)、語学(就職に必要とするレベル)、就職あっせん(パソコン教室など含む)、住宅あっせん、未就学児等の教育等である。


慣れない外国人児童の受け入れにより生まれる差別やいじめも

母親が心身面のケアを必要とする原因のひとつに、子供が通学するポーランドの学校での差別やいじめ、暴言等もあるようだ。クラスにウクライナからの避難児童が増えたこともあり、学校側も教員数を増やすことができず、こうした混乱もその原因と言えよう。母親がケアを必要とする背景には、子供の教育の悩みや、避難生活によるストレスを含むものもあるようだ。

人権や異文化理解を学び実践する場をつくれないか

ポーランドの学校現場では、外国人児童を受け入れるための教育を受けた教師はおらず、児童の中に差別やいじめ、暴言等がみられた場合でも対応することが困難な状況にある。キャンプやレクリエーション(ポーランド内)を通じて、人権の大事さや異文化理解について自然に学習することはできないだろうか。

参考になる事例がある。弊社はJICAプロジェクトにおけるシリア危機に際する支援の一環として、トルコ人と、シリアから逃れてきた避難民との間の異文化関係の構築と相互理解を図るため、トルコの社会福祉士向けに、ファシリテーター養成研修を行った経験がある。例えば、日本人専門家(弊社コンサルタント)がファシリテーターとなり、レゴ(LEGO)を使ったコミュニケーション・プレイと交換ゲームを、児童向けに実施した。また、ワークショップの実施や、ランチタイムにシリア人とトルコ人の母親が一緒に料理を作って子供たちに振る舞うなどして、相互理解を深める活動を行った。

日本は欧米に比べて、差別が少ない国、人権を尊重する国として認識されており、トルコの事例のようなプロジェクトが展開されることを望む。


ポーランド国内の小学校に通うウクライナ避難児童(提供:カリタス)

(出所:弊社のJICA調査団)

(文責:荒井、藤井、朝比奈)

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