アフリカ諸国では都市化が進んでおらず、サブサハラアフリカでは都市化率が約41%(2020)に留まっている(比較:北米は約82%、アジアは約50%)。農村部ではインフラ整備が進んでおらず、家庭用の調理用燃料として薪や木炭が使われている。違法な森林伐採による、薪・木炭の生産への規制や、農村住民の生活の質の向上の高まりに起因してプロパンガスなどの次世代型調理用燃料へのニーズが高まっている。
サブサハラアフリカ諸国での家庭用燃料の現況
ウガンダの例を見てみると、農村部の家庭用燃料として86.7%を薪、12.7%を木炭でまかなっている。都市部では、薪:33.4%、木炭:65.7%と農村部に比べ木炭の使用率が高い。LPG(液化石油ガス)は農村部、都市部いずれにおいてもほとんど普及していない(図 1)。このような燃料用木材の生産が一因となり、違法な森林伐採が起きており、環境破壊が進んでいる。そのような状況を受けて2015年、アフリカ東部・南部の国々で「ザンジバル宣言」が発令され、木材およびその他林産物の地域内・地域間違法取引が抑制されてきている。この動きはアフリカ西部・中部にまで広がっている。
薪や木炭が家庭で使われている理由としては、室外での調理や(図 2)、農村部の家屋の気密性が低いため、室内で薪や木炭を使っても問題がない(図 3)という文化的背景がある。サブサハラ諸国の経済発展に伴い、人々が気密性の高い家屋に住むようになっていくと、薪や木炭では使い勝手が悪いため、LPGガスの需要が高まってくるはずである。
現状のサブサハラアフリカ諸国では、路上で売られている50㎏程度の麻袋に入った木炭(図 4)をバイクや自転車で家庭まで運搬している(図 5)。
難民受け入れにおけるインフラの整備の必要性
アフリカでは情勢不安に起因して、隣国からの難民の受け入れが各国で生じている。ウガンダでは2016年以降、南スーダンからの難民が急増し、 2020年現在、約142.5万人の難民・亡命希望者を受け入れている。ザンビアではアンゴラ難民や、ルワンダ難民などの本国への帰還を選択しない長期化難民に対して、2014年から「現地統合事業」として、長期化難民に対して、法的地位の付与、再定住区の土地権利取得、社会サービス提供、コミュニティ支援などを行っている。※そのような難民受け入れ・再定住地は受入国の辺境地域に設けられることが多く、受入地域においては電気、水、ガス等の基礎的インフラ整備が著しく遅れている。アフリカ各国政府、国際機関による迅速なインフラ整備が期待できない中、住民が継続的に利用可能で、エコかつ低価格、維持管理や操作が容易な民間技術・製品に大きな期待が寄せられている。
※2020 JICA ガバナンス・平和構築部 平和構築室 「平和構築分野におけるエネルギーの課題とニーズ ~ウガンダとザンビアの事例~」
カセットガスやサブスクリプションモデル普及の可能性
モザンビークでの木炭の価格は50kgの袋1つで、約300円で、4人世帯の1週間分の使用量を賄うことができる。LPGボンベもサブサハラ諸国で普及しつつあり、ウガンダのLPGガスの値段は、6kgボンベで約4,700円(UGX=0.034として計算)である。上述の単位重量当たりの発熱量を用いて、1MJあたりの料金を比較すると、木炭:0.39円/MJ、LPG:15.5円/MJと約40倍の価格差がある。LPGガスが高くつく要因の一つとして、ガスボンベや付属機器などの初期費用がかかることがあり、単純に燃料費だけを比較すると、単位熱量当たりの価格差は12倍まで低下する。一般にサブサハラアフリカの消費者の購買力は低く、カセットガスなどの小分けにした販売方法や、サブスクリプションモデルなどを導入する必要がある。長期的に見ると、サブサハラ諸国の経済発展に伴い、次世代型調理用燃料へのニーズは高まっていくはずなので、低中所得層に向けた販売モデルを確立し、早期市場参入が有効であると考える。
(文責:ビジネスコンサルティング事業部 渕上)