建設費等の高騰により遅れていた大阪・関西万博会場の整備は、対策が取られることになり、これから会場やパビリオンの建設は急ピッチで進むものとみられる。それに伴い、参加国関係者の注力点はパビリオン内の内装や展示、また催事へと進んでいくことになろう。万博開催支援業務を実施中の弊社として、催事、特にビジネスマッチングのあり方について提言したい。
万博におけるビジネスマッチングのあり方(提言)
弊社が実施中の「大阪・関西万博ベストプラクティス選定事務局運営等業務」(日本国際博覧会協会)では、「いのち輝く未来社会のデザイン」の実現に向け、SDGs達成に貢献するにふさわしい世界中の取り組みを募集、審査する支援を行っている。一方で「全世界2025年大阪・関西万博に向けた途上国の参加促進に係る情報収集・確認調査」(JICA)では、参加する100ヵ国以上の参加国の展示内容等の支援を行っているが、これらの業務はほぼ順調に進捗しており、日々、参加国とりわけグローバルサウスと呼ばれる国々の大きな期待を肌で感じているところである。
さて、これらの国々の大きな期待については、本記事では紹介できないものの、ビジネス面の成果を期待している節がある。国際博覧会条約(1928年、パリにて署名)に規定されている「二以上の国が参加した、公衆の教育を主たる目的とする催し」とはかなり趣が異なるが、今日の世界情勢や時代の趨勢を踏まえ、世界のより多くの国々が主体的に参加できるような博覧会とするには致し方ないだろう。
双方のニーズを事前に確認した上で、的を絞ったプロモーションを
途上国企業と日本企業とのビジネスプロモーション(ビジネスマッチングを含む)の実績も多い弊社としては、参加国のパビリオン内で実施されるプロモーションについて、以下2点を緊急提言したい。
第一は、プロモーションの焦点を絞ることだ。日本側のニーズを十分に把握しないまま、多くの分野でプロモーションを実施しても成功率は低い。しかし残念ながら、特に途上国側においては、ビジネスプロモーションの会場で、意気投合することが成功であると考えられている節がある。プロモーションに参加する日本企業は、強いラブコールにより意気投合した顔はするものの、その後、具体的なビジネスに発展する例はきわめて少ないことを認識してほしい。
日本側のニーズ、例えば機械製品(部品)の日本企業による調達を例にとれば、まずはスペック・ロット(量)・価格・用途についての情報を事前に知っていただきたい。そして可能な限りオンラインミーティングでのざっとしたすり合わせをした上で、プロモーションの場でアピールやオファーをするという流れを勧める。対面者との意気投合は大事だが、ビジネスが成立するのは、こうした双方の企業側のニーズが満たされた場合に限ることを認識する必要がある。万博という貴重な場におけるプロモーションの成功率を上げるためにも、コロナを通じて世界が獲得したオンラインというコミュニケーションツールをぜひ活用してほしい。
個別の企業同士のマッチングではなく、業界同士や地域団体(自治体や商工会議所等)同士のマッチングを
第二は、万博の趣旨や、多くの日本のビジネスパーソン・関係者が集まるという大事な場であることも踏まえれば、個別の企業同士のビジネスマッチングよりも、業界同士や地域団体(自治体や商工会議所等)同士のマッチングになることが望ましいという点だ。
特定企業による個別製品(部品)の売買ではなく、長期的に、双方でどのような研究テーマに取り組むのか、そのための技術連携や人材の融通をどのようにするのかについて、幅広い議論を展開するのが望ましい。その中で、個別企業間のビジネスマッチングはあっても良いと考える。
万博の開幕まで、まだ1年半ほどある。多くのビジネスイベントが実施され、多くの集客のあることは、国の魅力を発信するのに良いことだが、ビジネスコンサルタントとして、是非、効果のあるビジネスプロモーション、ビジネスマッチングの企画・実施を期待したい。
(文責:ビジネスコンサルティング事業部 荒井)