タイでは急速な人口の高齢化が進み、2040年には2018年の日本と同程度の「超高齢社会」になると予測されている。その一方で、日本のような手厚い公的扶助による高齢者ケアが難しく、政府は地域コミュニティのネットワークや資源を活用した在宅ケアや民間投資による高齢者ケアを推進している。日本の持つ高齢者ケアのノウハウや技術に対する期待は大きい。
高齢者向け医療機器・施設の市場は年平均7.8%で成長
タイでは、2018年の65歳以上の高齢者の割合は12%、東南アジアでもシンガポールに次いでその比率は高く、人口の高齢化に即した社会づくりが急務になっている。その一方で、タイでは経済開発を経て成熟した社会になる前に人口の高齢化が進み、先進国に比べて財政基盤や社会的基盤が弱く、社会福祉制度も十分に整っていない中で、人口の高齢化に対応しなければならない。そのため、政府は、公的扶助に加えて、地域でのネットワーク/資源の活用や民間によるサービス強化を通じた高齢者ケアを推進しており、高齢者ケアに投資する民間企業を税制面で優遇する動きもある。最近ではユニバーサルデザインを用いた高齢者向け住居や、IT機器を使った在宅高齢者の見守りシステムなどのサービスも見られるようになっている。2021年8月にはカシコーン研究センターが、高齢者向け医療機器・施設の市場が年平均7.8%で伸びていると報告している。
介護食品や高齢者向け機能性食品でも日本のノウハウに高い期待
最近では、高齢者向けの介護食品や健康寿命延伸のための機能性食品も一般消費者向け市場で見られるようになっている。こうした食品に中には民間企業が開発した製品の他に、タイ国内の大学や研究機関と民間企業が共同開発した製品もある。しかし、依然、高齢者ケアの技術、情報、経験は不足しており、なかなか製品化に進めない現地企業も多い。豊富なノウハウや技術を持つ日系企業への現地企業からの期待は高い。
(文責:アイ・シー・ネット・アジア/岩城)